隣の芝は青く見える
後輩からの告白
「仕事、辞めようと思うんです。」
会社のカフェで1人、休憩をしていた時だった。
5歳下の後輩が急に部屋に入ってきたと思ったら
そのまま私の前に来て、口を開いた。
彼女は23歳。
うちの会社に入社したのは昨年の秋だから
まだ1年しか経っていない。
話を聞いてみると、人間関係から仕事の内容まで
とにかく気に入らないことが多いのだと言う。
彼女の口から止まることなく愚痴が溢れ出るのを
聴きながら、彼女は仕事を変えるべきだと思った。
嫌な仕事は辞めればいい
性別によっても仕事の比重は大きく変わってくるが、
私は基本的に嫌な仕事を続ける意味は無いと思っている。
起きている時間の殆どを仕事に費やしているのだ。
単純に、嫌なことにそれだけの時間を費やすのは
とってもとっても無駄だと思う。
誰にとっても、人生は楽しくあるべきなのだ。
銀行が嫌いになった日
かくいう私も、新入社員として入行した
某銀行の営業職を1年半で退職した。
ネチネチとした人間関係も、
ミスの許されないストレスフルな仕事内容も、
古めかしい昔ながらのスタイルも、
銀行という特殊な世界の何もかもが嫌だった。
ある日、職場に向かう電車が最寄り駅に着いた時。
私はどうしても電車から降りることができなかった。
今から思うと、鬱になりかけていたのかもしれない。
新しい仕事
転職しようと決めてからは早かった。
最終的に選んだのは、
銀行とは正反対のような職場だった。
建物も全面ガラス張りでオシャレだし、
新しい物をどんどん取り入れる社風で、
定時に帰っても文句も言われない。
職種もノルマの無い事務員を選んだ。
正直、営業職が事務職になり、
残業もしなくなったわけだから給料は下がった。
それでも、私の生活の質は格段に上がった。
大事なのは自分が幸せかどうかだ。
幸せじゃない人生なんて意味がない。
私にとって大事な物は、給料や世間体よりも
プライベートや心の落ち着きだったのだろう。
思う通りに進めばいい
何かの自己啓発本みたいだが、敢えて言う。
自分の人生なんだから思うように生きればいい。
無理をして自分の命を削る必要は全く無い。
しかし、それが逃げる転職であればしない方がいい。
少し嫌なことがあったからと言って転職をしていたら、
その転職はおそらくいつまでも続く。
お金を貰えるのだからしんどいのは当たり前だ。
逃げずに耐えなくてはいけない時も勿論ある。
そして、
転職はギャンブルだということを忘れてはいけない。
条件が良いものを選んでも、
十分に吟味して次こそは!!!と思っても、
実際に働いてみるまでどんな職場かは分からない。
隣の芝は青く見えるものなのだ。
結局はやってみること
結論、転職したいと思う人は転職すればいいと思う。
就活に打ち込んで100近くの説明会に参加したとしても
働く前から自分に合う会社なんて分かるわけがない。
実際に働いてみて、「何か違う。」と思うことは
正直、ごく普通のことである様な気がする。
私が転職を決めた時、両親はまず反対した。
父や母の世代では転職する人は稀だったからだ。
しかし、実際に転職をしてみて私は思う。
転職先は意外と沢山転がっている。
条件のいい職場に入れるチャンスだって普通にある。
もし転職に失敗したとしても、
転職してもこれか。会社って結局こんなもんなんだな。
と、仕事への価値観が変わって、割り切れる様になれば
それはそれで問題ないことだ。
やりたいと思ったことは、やってみればいい。
隣の芝の色は関係ない
もし、私が最初から今の商社で事務員をしていたら
毎日のルーティンワークや低い給料に飽き飽きして
同じように転職活動を始めていたかもしれない。
今の自分の生活が幸せだと思えるのは、
前職の経験があるからだろう。
色んな状況が加味されて、自分が選んだ
今の「幸せ」が出来上がっている。
大事なのは、何をしているかではなく、
自分の今に満足できているかどうか。
隣の芝は青いかもしれないけれど、
人の真似をしても幸せにはなれない。
幸せの基準は、過去の経験等でも変わってくる。
比べるべきは隣ではないということだ。
遠回りをしても関係ない。
自分が「幸せ」と思えることが何よりも幸せだし、
そのためにはとにかくやってみることが大切だと思う。
まとめ
彼女の話を聞きながら、私はそんなことを考えていた。
勿論私には幸せを手に入れようとしている彼女を
止める権利もなければそんな言葉も見つからなかった。
まだ23歳なのだから、思う通りにやってみればいい。
人生は意外と自分の思い通りに進んでくれるものだ。
そうして、退職する決意を固めた彼女の
晴れ晴れとした後ろ姿を見送りながら、
おそらく彼女の決断は正しかったのだろうと思った。